先生の声:教育委員会のご担当者へ

地域全体での導入と普及の取り組み

子どもたちを取り巻く情報環境が急速に変化する中で、情報モラル教育を学校任せにするのではなく、自治体としてどのように支えていくかが問われています。学校間で実践に差が生じやすい中、教材や指導の方向性をどのように共有し、現場が取り組みやすい環境を整えていくかは、教育委員会にとって重要な課題です。ここでは、舞鶴市教育委員会学校教育課の龜井 貴子先生、淡路市教育委員会の田村 真央先生、多可町教育委員会学校教育課の足立 浩司先生にお話を伺いました。

Q1

GIGAワークブックを導入するにあたり、自治体としてどのような課題や困りごとがありましたか?

A
舞鶴市教育委員会 龜井 貴子 先生
教育委員会として、ICT支援員の配置などの体制整備は進めていましたが、情報モラル教育の具体的な内容については、各校に任せている状況でした。そのため、各学校でさまざまなトラブルが起きており、教育委員会としても、「何とかしなければならない」という危機感を持っていました。令和2年度に、コロナ禍の影響で小中学生への1人1台端末の配布が前倒しになったことで、その危機感はさらに高まりました。そこで、自治体として統一した情報モラル教育を考えていく必要があると判断しました。
A
多可町教育委員会 足立 浩司 先生
私は令和5年度から教育委員会に在籍していますが、令和4年度には、各学校の先生方から、他社の情報モラル教材を導入してほしいという要望があり、実証事業を行いました。令和5年度から本格導入しましたが、活用が十分に進まず、有償版であったことも課題でした。そこで、無償で使えるGIGAワークブックに切り替え、授業での活用をお願いすることにしました。
A
淡路市教育委員会 田村 真央 先生
私はこの4月から教育委員会に在籍していますが、それ以前は中学校で勤務していました。以前から現在に至るまで、SNSに関わるトラブルは多いと感じています。子ども同士のトラブルだけでなく、子どもが見知らぬ大人と関わってしまうケースもあり、スマートフォンを持つ年齢が低年齢化していることも、大きな課題です。
また、情報モラルについて、「何を」「どのように」伝えるのかについて、先生方が迷う場面も多くあります。5年前に伝えていた内容と、今伝えるべき内容が異なるなど、時代の変化に合わせた指導が難しい点も、課題だと感じています。
Q2

GIGAワークブックをどのように学校や先生方へ普及・周知していますか?

A
舞鶴市教育委員会 龜井 貴子 先生
1人1台端末の配布以降、情報(教育)主任を対象とした研修会を継続的に実施しています。GIGAワークブックを導入した翌年には、情報(教育)主任を集めて、GIGAワークブックをテーマとした研修会を開始しました。導入が決まってからは、情報教育主任を中心とした普及を、継続的に行っています。
また、舞鶴市では「舞GIGAスクール推進計画」を打ち出しています。その4つの柱の1つが「GIGAワークブックまいづる活用研修会」であり、GIGAワークブックの活用を、市として一体的に推進しているところです。
A
多可町教育委員会 足立 浩司 先生
普及活動としては、教育委員会から学校に対して「お願いをしていく」ことが中心になっています。実態としては、先生方任せになっている部分も多く、どの程度まで働きかけるのがよいのか、プッシュの加減には悩んでいます。
その中で、教育委員会としては、子どもたちがすぐにアクセスできるよう、ブックマーク登録を行うなど、システム面での環境整備を進めています。
A
淡路市教育委員会 田村 真央 先生
教育委員会に情報が届いた際には、まず学校への周知を行っています。「こういった教材があります」「研修で活用できます」「教育支援システムのどこに保存されています」といった形で、学校に依頼しています。
また、今年度は校長会でも、GIGAワークブックがあることを伝え、情報モラルの研修や授業で活用してほしいと、校長先生方に依頼しました。
Q3

GIGAワークブックを実際に導入されてからの学校の反応について教えてください。

A
舞鶴市教育委員会 龜井 貴子 先生
正直なところ、情報(教育)主任だけを集めた研修では、校内への広がりには限界があると感じています。研修会で学んでも、学校に戻ると、1人で進めなければならない状況になりがちです。
情報(教育)部と情報(教育)主任が連携できていれば、一緒に進めていくことができますが、その両者をつなぐ役割を担う人がいない学校もあります。情報(教育)部の部員、情報教育主任それぞれが、GIGAワークブックの活用に向けてチャレンジしているものの、そこが一致しないと、学校全体にはなかなか広がりません。
私の勤務校は規模が大きく、部員も3人いたため、協力しながら進める方法を探ることができましたが、情報主任の先生1人で取り組んでいる学校や、実践につながっていない学校もあります。学校ごと、教員ごとに温度差があることを感じています。
A
多可町教育委員会 足立 浩司 先生
現在のところ、GIGAワークブックに関して、学校の先生方から教育委員会に対する具体的な要望は出ていません。
A
淡路市教育委員会 田村 真央 先生
教育委員会には大きな反応は届いていませんが、学校現場では、GIGAワークブックの存在自体を知らない先生がいらっしゃる状況があります。校長先生方にはお伝えしていますが、学校内で十分に周知されていなかったり、担当の先生に伝えたところで止まってしまったりすることもあります。
伝え方については、教育委員会としても、改めて考えていく必要があると感じています。また、「どこにあるか」だけでなく、「こういうふうに使える」という具体的な活用イメージも、もう少し丁寧に伝えていきたいと考えています。
Q4

教育委員会として工夫されていることはあるでしょうか?

A
舞鶴市教育委員会 龜井 貴子 先生
それぞれの学校が、GIGAワークブックをどのように使っているのか、まずは実態を把握することが大切だと考えています。また、教育委員会から発信はしていますが、まだ知らない学校や先生もいると思います。
現在は、ICT支援員の方々にも活用を促しているところです。年間3回ほど、ICT支援員と情報共有の場を設けており、ICT支援員も含めた形での情報共有は、1つのポイントになると感じています。
A
多可町教育委員会 足立 浩司 先生
教育委員会に指導主事として来ていただいている先生がおり、その先生が、過去にオープンスクールで実践した授業の事例があります。その事例を切り口に、「こんな授業もできますよ」と、各学校の先生方に紹介していけたらと考えています。
A
淡路市教育委員会 田村 真央 先生
内容や回数には差がありますが、各校では、生徒向けや保護者向けに、年1~2回程度、情報モラル教育を行っています。また、地区ごとに研修会を実施し、先生方が学ぶ機会を設けている地区もあります。
ただ、そうした取組の中に、GIGAワークブックが必ずしも位置付けられているわけではありません。今後は、既に行われている情報モラルの研修などの中に、GIGAワークブックを自然に取り入れてもらえるような仕組みを、教育委員会として考えていければと思っています。
Q5

教育委員会として、情報モラル教育の見通しを教えてください。

A
舞鶴市教育委員会 龜井 貴子 先生
デジタル技術は、子どもたちの生活から切り離せないものになっています。そのような社会の中で生きていく子どもとして、「これはおもしろそうだけれど、やってはいけないな」と、自分で判断し、責任をもって行動できることが大切だと思います。
生成AIについても同様で、「どううまく活用するか」を考える力が求められています。情報の信頼性や著作権など、新しい課題についても学ぶ機会をつくることで、子どもたちが自分で考え、判断し、行動できる姿を目指したいと考えています。
A
多可町教育委員会 足立 浩司 先生
教育ビジョン自体は示されていますが、情報モラル教育については、十分に位置付けられていない部分もあります。教育委員会としては、学校現場の負担も考慮しながら、どの程度、どのように推進していくのかを検討していきたいです。
A
淡路市教育委員会 田村 真央 先生
GIGAワークブックを見ていて、子どもたちには、自分で考えて判断する機会が必要だと感じています。「どこまでが嘘で、どこからが本当なのか」といった具体的な内容が多く扱われている点は、大きな特長だと思います。
主体的に自分事として考え、「これはよいのか、よくないのか」「嘘なのか、本当なのか」を自分で判断する力を身に付けてほしいと考えています。情報が次々と移り変わる社会の中では、人任せや他人事ではいられないからこそ、その力が重要だと思います。
「伝える立場」から「支え、つなぐ立場」へ。自治体が一体となって推進する情報社会を生きる力の育成
酒井郷平 准教授
常葉大学 教育学部
酒井 郷平 准教授

今回のインタビューから、教育委員会が直面している情報モラル教育の課題は、「教材を導入すること」そのものではなく、学校ごとの実態や温度差を踏まえながら、どのように学びを支えていくかにあることが見えてきました。端末整備や体制づくりが進む一方で、指導内容や方法は学校任せになりやすく、時代の変化に応じた更新も求められています。

GIGAワークブックは、そうした状況の中で、学校・教員・支援員をつなぐ共通の土台となり得る教材です。情報モラル教育は、正解を一斉に示すものではなく、子どもたちが自ら考え、判断し、行動する力を育てる営みです。教育委員会が「伝える立場」から「支え、つなぐ立場」へと役割を広げていくことが、これからの情報社会を生きる力の育成につながっていくと考えます。

ヒアリング調査協力者

川戸 宏太 先生
舞鶴市小学校教育研究会情報教育部
梶原 充 先生
舞鶴市小学校教育研究会情報教育部
龜井 貴子 先生
舞鶴市教育委員会学校教育課
廣瀬 雅之 先生
淡路市立東浦中学校
田村 真央 先生
淡路市教育委員会
市位 真 先生
多可町立八千代小学校
足立 浩司 先生
多可町教育委員会学校教育課